1時間の定例会議が終わったあと、議事録を作るのにもう1時間かかっている。毎週それが自分の仕事になっている。 この記事は、その状態から抜けるためのものです。 先に書いておくと、AIを入れても議事録の仕事は半分しか減りません。 減るのは書き起こしの部分だけで、確認と共有は残ります。そのうえで、ツールを選ぶより先に決めることが4つあります。最初の1回の始め方も書きます。

AIを入れても、議事録の仕事は半分しか減らない

1時間の会議に対して発生する作業を、4つに分けます。

作業内容AIを入れた後
書き起こし録音を聞き返して文字にする大きく減る
整形決定事項・宿題・担当・期限に並べ替える減る(形式を決めてあれば)
確認発言の意図と合っているか、外に出していい内容か残る
共有配る、保管する、前回の宿題と突き合わせる残る

減るのは上の2つです。下の2つは人の判断で、AIに渡せません。

「議事録作成の時間が80%減った」という記事を見かけますが、その多くは書き起こしの時間だけを数えています。確認と共有を入れて測り直すと、数字は小さくなります。導入して「思ったより減らない」となるのは、ここを勘定に入れていないからです。

半分でも十分に効きます。週1時間が30分になれば、年で20時間以上が戻ります。ただ、期待値は先に合わせておいてください。

決めておく4つのこと

ツールの比較記事を読む前に、この4つを決めてください。ここが決まっていれば、どのツールを選んでも大きくは外れません。

①対象外にする会議を先に決める

議事録は機密情報の塊です。 特に、人の評価に関する発言は、文字になった瞬間に性質が変わります。

次の会議は対象外にしてください。

  • 人事評価、昇格、懲戒に関するもの
  • 価格交渉、取引条件の交渉
  • 事業の譲渡や提携に関するもの
  • 労使間の協議

会議のたびに「これは録っていいか」を判断していると、判断が面倒になって全部やめることになります。先にリストで切っておく方が早い。

それと、録音することは参加者に伝えてください。黙って録らない。当社が情報の分類を先に決めるのと同じ理由で、後から揉める要素を最初に潰しておきます。

②録音を誰が、何で録るか

「誰かが録る」で運用すると、全員が「他の人が録っていると思った」と言う日が来ます。 その回の議事録は作れません。

担当を1人決めてください。その人が休んだときの代わりも決めてください。ここまでやって、やっと録音が毎回残ります。

機材は手持ちで足ります。対面の会議ならスマートフォンのボイスメモ、オンライン会議なら Zoom・Microsoft Teams・Google Meet の録画機能です。専用のマイクを買うのは、次に書くテストで音が取れなかったときだけで十分です。

③議事録の完成形を1枚決める

AIは「良い議事録」を知りません。 形式を渡さないと、毎回違う形のものが出てきます。形が毎回違うと、読む側が慣れず、結局読まれなくなります。

1枚の型を決めてください。項目は4つで足ります。

  1. 決定事項
  2. 宿題(担当者と期限をつける)
  3. 保留になったこと
  4. 次回に持ち越すこと

発言の全文は載せません。議事録の目的は、読み返して動けることです。誰が何を言ったかを全部残すと、長くなって誰も読み返しません。

④誰が確認してから配るか

AIの出力は下書きです。確認する人を1人決めてください。会議の主催者が適任です。

確認は15分以内で終わる形にしてください。終わらないなら、③で決めた形式が重すぎます。 項目を減らすか、発言の引用をやめるか、どちらかで調整します。

録音が取れていないと、何を選んでも成立しない

ここでつまずく会社が一番多い。ツールの比較より先に、自社の会議が録れるかを確かめてください。

会議室で気をつけるのは3つです。

  • マイクは部屋の中央ではなく、声の小さい人の側に置く
  • 空調の吹き出し口の真下を避ける。風の音が声を潰す
  • 資料をめくる音がマイクの近くで鳴ると、その間の発言が消える

最もつまずくのは、現地と遠隔が混ざる会議です。Zoom や Teams をつないだパソコンが会議室に1台あるだけ、という形が典型です。オンライン側の音はきれいに録れるのに、会議室側の声が遠い。録音を聞き返すと、会議室の奥にいた人の発言だけが抜けています。対策は、会議室側にもう1台マイクを置くか、発言する人がマイクの近くで話す運用にするかのどちらかです。

テストの手順は次のとおりです。

  1. 次の会議で、スマートフォンのボイスメモを机の中央に置いて録音する
  2. 会議が終わったら、最初の5分だけ聞き返す
  3. 全員の声が聞き取れるかを確認する。特に、一番奥に座っていた人
  4. 聞き取れない人がいたら、次回はその人の側にマイクを寄せてもう一度録る

このテストが通るまで、ツールの比較には進まないでください。音が取れていなければ、どのサービスを契約しても結果は同じです。

最初の1回は、文字起こしをやらない

ここは当社の判断で、一般的な導入手順とは順序が逆です。

最初は、いつもどおり手でメモを取ってください。 そのメモをAIに渡して、③で決めた形式に整えさせる。これだけを1回目にします。

理由は、失敗したときに原因を切り分けるためです。文字起こしから始めると、うまくいかなかったときに原因が3つに分かれます。録音が悪いのか、AIの精度が低いのか、こちらの形式の指定が悪いのか。3つ同時に疑うと、直せません。

手元のメモを整形させるだけなら、うまくいかない原因は形式の指定しかありません。指示の書き方を変えれば直ります。ここで型が固まってから、録音と文字起こしに進んでください。

当社がAI業務支援で「成果物が確認できる小さな業務から始める」としているのは、この考え方です。

「80%削減」の数字をそのまま信じない

導入事例として出ている削減率は、自社の事例1〜2件を根拠にしていることがあります。母集団も期間も書かれていない数字は、自社に当てはめられません。

否定はしません。書き起こしだけを見れば、それに近い削減になることはあります。問題は、その数字を自社の判断材料にできるかどうかです。

自社で測るなら方法は単純です。導入する前に、2回分の会議で4つの作業それぞれの時間を測ってください。 スマートフォンのストップウォッチで足ります。これが基準になります。

測っていない会社は、導入後に「減った気がする」以上のことを言えません。そして「気がする」では、次の投資の判断ができません。

向いていない会議

全部の会議に入れる必要はありません。

参加者が3人以下、30分以内の打ち合わせ。 録音して整形して確認する手間の方が、その場でメモを取るより大きい。

雑談から案が出るタイプの会議。 要約すると議論の過程が消えます。この種の会議で残す価値があるのは結論ではなく、「なぜその案が消えたか」です。AIの要約はそこを落とします。

型番や専門用語が飛び交う会議。 文字起こしは数字と型番を間違えます。似た音の別の型番になって、そのまま議事録に載ります。対策として、型番はその場で口頭で言わず、チャットか資料に書いて共有する運用に変える方法があります。会議の進め方を変える話になるので、そこまでやる価値があるかは判断が要ります。

最後に正直なところを書いておくと、導入の初月は手間が増えます。 録音のテスト、形式の調整、確認の往復。楽になるのは2か月目からです。ここで止める会社が一定数あります。

まとめ

次の定例会議で、スマートフォンのボイスメモを1本録って、最初の5分だけ聞き返してください。全員の声が聞き取れるかどうかが、この先の全部を決めます。ツールの検討はその後で間に合います。

当社のAI業務診断では、どの業務から手を付けるかの棚卸しから行っています。時間がかかっている業務をお知らせください。

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この記事を書いた人

しがビズ(株式会社トリプルエッグ)

滋賀県の中小企業向けに、会社サイトの作り直しと、生成AIの業務導入を行っています。議事録、見積り、営業文、求人、集計など、繰り返す業務から手を付けています。